日本の半導体復権、最後のチャンス Super Trouper♪

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2026年1月11日の日経新聞に、自らラピダスを設立した東哲郎会長が「これを逃すと後はない」と渾身の思いを綴った新聞紙面ほぼ1ページの長編記事が掲載されました。

この記事を読んでワクワク・ドキドキ止まらなくなり、著作権リスクも顧みず感動を皆様にご紹介します。

 

日本の半導体産業は1989年(平成元年)に世界シェア50%強を占め頂点に達しましたが、その後は韓国や台湾との投資競争に敗れシェアを失い、2000年代前半に先端開発から撤退し、技術は停滞しました。

 

そして武力行使も辞さない独裁国家と民主主義国家世界が分断されつつある現実に目覚めた日本政府は、産学官が協力して半導体産業の復権に挑んでいます。

 

メーカーと顧客が協調しなければ技術開発は進まないと言われますが、いまの日本にはそのチャンスが無いことが半導体産業の競争力を失わせる大きな原因ではないかと東哲郎会長は指摘します。

ぬるま湯で徐々に水温を上げても死ぬまで気づかない『ゆでガエル』状態に、日本経済は30年間どっぷりと浸かっていたのでしょう。

 

そんな閉塞感真っ只中の2020年夏に、東京エレクトロンの会長兼社長だった東哲郎氏へ米IBMの幹部から2ナノ技術の供与について打診された時、チャンスが『来た!』と感じたそうです。(なんとドラマチックなのでしょう...)

 

詳しい話は、日経電子版の記事をご覧下さい。 

 

日本の半導体復権、最後のチャンス 

ラピダス・東哲郎会長

[会員限定記事]
 

日本が、かつて世界一だった半導体産業の復活に挑んでいる。その中心は最先端半導体の国産化を目指すラピダスだ。北海道に建設した工場で2025年に試作を始め、官民から7兆円もの投資をつぎこむ一大プロジェクトに突き進む。半世紀近く業界に身を置き、自らラピダスを設立した東哲郎会長は「これを逃すと後はない」と強調する。

日本は1980年代に半導体販売額で世界首位となったが、その後は韓国や台湾との投資競争に敗れシェアを失った。2000年代前半に先端開発から撤退し、技術は停滞した。

日本は「ゆでガエル」

――技術が何世代も止まっていた日本で世界最先端の2ナノ(ナノは10億分の1)メートル品の量産を目指している。危険な賭けではないのか。

「リスクがないとは言えないが、やらないリスクとやるリスク、どちらが大きいのか。我々はリスクをとってでもやると決意した。日本を技術立国として再生する」

「最先端品を国内で生産できることが非常に重要だ。日本企業のトップと話していると、海外から半導体を調達すると納期などで競合より後れを取るという悩みを聞く。さらに、半導体メーカーと顧客が協調しなければ技術開発は進まない。いまの日本にはそのチャンスがない。それが日本企業の競争力を失わせる大きな原因ではないか」

「1989年時点の世界の時価総額上位50社に日本企業は32社入っていたが、2025年時点ではトヨタ自動車の1社だけ。ぬるま湯で徐々に水温を上げても死ぬまで気づかない『ゆでガエル』という表現があるが、今まさに日本がそういう状況に陥りつつある」

ピダスが試作に成功した2ナノ半導体のウエハー(25年7月、北海道千歳市)

――20年夏に米IBMの幹部からの電話を受けたことからラピダスは始まった。2ナノ技術の供与について打診されたときどう考えたか。

「『来た!』という感じ。非常にうれしかった。01年ごろから(かつて社長を務めた)東京エレクトロンとしてIBMの半導体開発に協力してきた。その成果が20年後に戻ってきた。電話を受けたとき、絶対に日本でやらないといけないという使命感を覚えた」

産業復活の基盤あるうちに

――当初は国内の半導体企業に2ナノの量産を打診したが、引き受ける企業はなかったと聞く。

「残念な気持ちがなかったわけではないが、各社とも精いっぱいで最先端をやる選択をできなかった。この機会を逃せば後はないというなかで政治家や政府と相談し、ラピダスを設立しようと決めた。かつて(1980〜90年代に)先端分野で働いていたエンジニアがどんどん集まってきた」

「日本は半導体の製造装置や素材で高いシェアがある。そういう企業が日本にいる間に始めないと産業を復活させる基盤がなくなる。そうなると大問題だ。エンジニアが高齢化している問題もあった。これを逃すわけにはいかないと考えた」

――31年度までに総額7兆円超の投資を計画し、大部分を政府に頼る。民間企業からはこのうち1兆円の出資を集める計画だ。ただ、出資を検討する企業の中にも温度差がある。

「米国や台湾、欧州ですら国や地域が大きな資金を最先端産業に投じるのは一般的だ。これまで日本は政府の支援が非常に小さかった。その意味で最先端技術への支援が打ち出されたことは重要だ。ラピダスも将来は自立し、世界に貢献する」

ラピダスの半導体工場(25年7月、北海道千歳市)

「民間出資については企業ごとに製品やビジネスの状況は異なるので温度差は当然ある。今後数年で人工知能(AI)のデータ量が膨らみ、半導体への要求は高まる。26年、27年と進んでいくなかで各社の認識も変わっていくのではないか」

――各国が半導体支援を拡大している。供給過剰の懸念はないのか。

「2ナノ品は30年に世界全体の需要に対して供給能力が約10〜30%不足する予測がある。供給過剰を心配する必要はない」

AI半導体の競争力を左右する微細化では台湾積体電路製造(TSMC)が先行し、先端品の生産をほぼ独占する。米インテルや韓国サムスン電子は良品率の向上に苦戦する。

――技術の壁は大きい。TSMCは数千人体制で微細化技術を開発しているのに対し、ラピダスは1000人規模だ。この差を埋められるのか。

「非常に大きな課題だ。今後10年で半導体人材は10万人くらい必要になる。高専や大学院での育成や米国企業への派遣などを含め徹底的に人材を育てる。変化を迫られている他の産業で働く人たちを再教育して半導体産業に生かすようなことも求められる」

――東京エレクトロン時代から約半世紀、半導体業界に関わり、日本の栄光と凋落(ちょうらく)を間近で見てきた。教訓をラピダスにどう生かしていくか。

「日本は1980年代に半導体産業を伸ばした。鍵となったのは電機メーカーが企画・設計から製造まで一貫して自社で手がける『垂直統合型』だった。世界に追いつく段階では非常に効率が良かった。だが、いざ先頭に立ち自分たちで世界的なものを生み出す段階ではしがらみが足かせになった」

「半導体の性能が上がり開発費もかかるようになった。そのなかで日本勢は付加価値が高い製品を生み出し、そこで得た利益を次の開発に投入できなかった。利益に対する意識が弱く、新しいものを生み出していく力が足りなくなった」

「ラピダスはいま回路線幅2ナノの量産を目指すと同時に、次世代の1.4ナノの開発を視野に入れている。その先の1ナノもやっていく。半導体の技術だけではなく、最終製品と一緒に伸ばさないといけない。パソコンではインテルと米マイクロソフトが一緒に伸びた。スマートフォンでも同様だ。優れた製品と半導体技術が刺激し合う好循環をつくりたい」

東哲郎ラピダス会長は半世紀近く半導体産業の前線に立つ

フィジカルAIが日本の勝ち筋

――かつては一国から世界中に半導体を供給できた。しかし現在、米中対立を背景にサプライチェーン(供給網)の分断が起きている。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は22年、米国での工場建設に際し「グローバリズムはほぼ死んだ」と述べた。こうした環境下で日本の勝ち筋は。

「全てを自国でやるのは無理だが、サプライチェーンの再編成を考えないといけない。半導体やデジタル技術は簡単に国境を越える。その流れは止められない。日米を中心に友好国と協調することが重要だ。ラピダスは米国や欧州、アジアの半導体研究機関と連携を深める」

「日本は設計力やアプリケーションを生む人材面が弱い。最初は海外の力を借りて、日本で育てていくことが必要だ。まず何を強化しないといけないのか選択し、どこと協力するのが一番安全かという観点で考えていくのが筋道だろう」

「日本には装置や素材メーカーといった土台がある。製造業の品質の高さと生産効率を上げようという意欲が強い国民性もある。さらに(AIがロボットや機械を自律的に制御する)『フィジカルAI』を推進するうえで産業機械など海外にはない製品も豊富だ。おのずと2ナノや1.4ナノの需要が高まる」

――台湾有事についてはどの程度のリアリティーを持って見ているか。

「戦争状態が起きて、台湾有事になるということは考えづらい。ただ、政策リスクなど万が一に備える必要はある。現在の自由貿易のなかでも最先端の半導体を入手するのは難しくなっている。そのことをよく認識して体制を整えなければいけない」

ひがし・てつろう 1977年東京都立大院修了、東京エレクトロン入社。96年に社長、03年に会長。22年8月にラピダスを設立し現職。ラピダスや理化学研究所が参画する研究機関「最先端半導体技術センター(LSTC)」の理事長も務め、半導体人材の育成や最先端技術の開発を主導する。

人材育成が急務(インタビュアーから)

「無理だと思っていたが、ラピダスは成功するかもしれない」。25年末、米西海岸から帰国した半導体関係者からこんな評価を聞いた。

根拠は米グーグルや米アマゾン・ドット・コムが、独自半導体を設計し米エヌビディアに対抗しうる成果を出し始めていることだ。グーグルなどが設計を委託する米ブロードコムは、ラピダスと製造委託に向け交渉しているとされる。

半導体受託生産におけるTSMCの世界シェアは7割を超えた。ラピダスにはまだ越えるべきハードルが多いものの、設立から3年で「成功するか」の議論が海外でも出ていることは期待の裏返しでもある。

取材したラピダスのベテラン技術者たちからは一様に熱意を感じた。だが彼らも10年後には引退する年齢だ。彼らが技術と志を若い世代につないでいけるよう、国全体での人材育成が急務だとの考えに共感する。

(向野崚)

写真 井埜慎太郎

映像 森田英幸 小川賢一 坂口理央

下画像は、2026年1月11日付け日経新聞紙面ほぼ1ページを占める長編記事です。

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